経路充電インフラの課題解決に貢献する
最大出力150kW EV用大容量急速充電器
山本 脩斗 Shuto Yamamoto 鈴木 剛志 Takeshi Suzuki 鈴木 健司 Takeshi Suzuki
東光高岳技報 No.12 2025
山本 脩斗 Shuto Yamamoto 鈴木 剛志 Takeshi Suzuki 鈴木 健司 Takeshi Suzuki
カーボンニュートラルの実現に向け,電気自動車(以下,EV)の普及が求められており,そのためにも充電インフラの拡充が必要とされている。経済産業省の「充電インフラ整備促進に向けた方針」(1)には「車両の電池容量と充電性能を踏まえ,また,利便性向上と費用負担を考慮し,高速道路など充電ニーズが高い場所においては,1口90kW以上の高出力の急速充電器を基本とし,特に需要の多い場所においては150kWの急速充電器も設置する。」とあり,より高出力に対応した充電器のニーズは高まっている。EV電池の大容量化が進み,必要な充電時間は長くなる傾向にあるが,高速道路サービスエリアなど不特定多数の利用者がいる公共向けの経路充電(目的地に着く途中での充電)では,ガソリンの給油時間と同程度の充電時間を求める声も多い。そのような日本国内の経路充電インフラの課題に対応すべく,最大150kW出力の急速充電器(以下,本器)を新たにSERA(2)(図1)シリーズのラインアップに加えたので紹介する。
2.1 製品仕様
本器の製品仕様を表1,外観を図2に示す。
| 品名 | SERA-150 |
|---|---|
| 型式 | HFR1-150B12 |
| 入力 | 三相3線AC 400V,50/60Hz |
| 出力 | DC 150V~450V,最大334A,最大150kW |
| 効率 | 94%以上(定格入出力にて) |
| 充電ケーブル | 70mm2タイプ,ケーブル長5m |
| 保護等級 | IP44 |
| 周囲温度 | -10~+40℃ |
| 周囲湿度 | 30~90%(結露なきこと) |
| CHAdeMO注1) | Ver2.0 |
| 通信方式 | OCPP注2) 2.0.1 |
| 課金認証 | あり(時間課金/従量課金) |
図3の通り,本器ではコネクタホルダ部を扉に内蔵したことで,雨雪対策効果が期待できる。
2.2 大容量でもコンパクトなサイズ
本器は最大出力150kWでありながら,東光高岳の現行機種(SERA-120)と幅と奥行が同寸法にて設置可能な省スペース化を実現した。SERA-120(120kW 2口)との外形比較を表2,実機比較を図4に示す。
| 品名 | SERA-150 | SERA-120 |
|---|---|---|
| 型式 | HFR1-150B12 | HFR1-120B10 |
| 幅(mm) | 750 | 750 |
| 高さ(mm) | 1,865 | 2,074 |
| 奥行(mm) | 642 | 642 |
2.3 ユニバーサルデザイン 注3)
ユーザの利便性向上を具体化するため,経済産業省および国土交通省が策定した「電動車のための公共用充電施設におけるユニバーサルデザイン・バリアフリー対応に関するガイドライン」(3)には緊急停止(非常停止)ボタンを除く急速充電器の操作高さを1,400mm以下とするよう,明記されている。本器はこれに基づき,最大で200mmの基礎(台座)上に設置した場合にも急速充電器の操作高さが1,400mm以下となる配置とした。なお,オプションとなる高さ違いのベース(電源引込用の通線口付)使用時においても,本ガイドラインを満たしたものとなっている。標準仕様およびオプション仕様での機器の操作高さを表3,外形を図5に示す。
| 操作部位 | 操作高さ 標準 (mm) |
操作高さ オプション (mm) |
指針 (mm) |
|
|---|---|---|---|---|
| タッチパネル ディスプレイ |
基礎無 | 1,053 | 1,133 | 1,400以下 |
| 基礎有 | 1,253 | 1,333 | ||
| コネクタ ホルダ |
基礎無 | 805 | 885 | |
| 基礎有 | 1,005 | 1,085 | ||
| ICカード リーダ ※ |
基礎無 | 1,060 | 1,140 | |
| 基礎有 | 1,260 | 1,340 | ||
2.4 特定計量制度対応
家庭の太陽光発電やEVなどの直流電力を扱う分散型電源の普及とともに電源ごとの直流電力の取引が新たなニーズとして現れたことから,経済産業省は2022年4月より「特定計量制度に係るガイドライン」(4)を策定した。また,同省が策定した「充電インフラ整備促進に向けた指針」では「充電した電力量(kWh)に応じた課金(従量課金)の広範な導入について,25年度からのサービス実現を目指す。」とある。本器はこの特定計量制度に基づいた直流電力計量機能を搭載したことで,従来の時間課金方式のみならず,従量課金方式にも対応した東光高岳製急速充電器初のモデルである。タッチパネル上の充電電力量表示を図6に示す。
2.5 OCPP 2.0.1対応
OCPPはEV用充電器とそれを管理・運用するシステム間の通信を標準化するプロトコルである。OCPPによって充電事業者は,異なるメーカのEV用充電器を容易に統合・管理でき,効率的な充電管理システムの構築が可能となる。本器は東光高岳の現行機種にて搭載されたOCPP 1.6ではなく,OCPP 2.0.1を製品リリースから採用した初のモデルとなり,遠隔でのより高度な充電器の運用・管理も可能である。
本稿では経路充電インフラの課題解決に向けた最大150kW出力の急速充電器(SERA-150)について紹介した。本器の追加により,東光高岳では3~150kW出力に対応したEV用充電器5機種のラインアップとなり,クラウド連携含めてお客様の様々な充電シーンに応じた提案が可能となった。
日本政府やCHAdeMO協議会等が目指す充電インフラの普及促進のため,世界初の取り組みであるCHAdeMO規格の一口最大出力350kW(総出力400kW)の次世代急速充電器の開発にも引き続き取り組んでいく。
(1)「充電インフラ整備促進に向けた指針」経済産業省(2023)
(2) EV充電インフラ「SERA」東光高岳 https://www.tktk.co.jp/ev-quickcharger/(2025年5月26日閲覧)
(3)「電動車のための公共用充電施設におけるユニバーサルデザイン・バリアフリー対応に関するガイドライン」経済産業省,国土交通省(2024)
(4)「特定計量制度に係るガイドライン」経済産業省(2022)
注1) CHAdeMO:2010年に日本が主導して規格化を実現したEVの急速充電方式であり,2014年にはIEC(国際電気標準会議)にて国際標準として承認された。「CHArge de MOve=動く,進むためのチャージ」,「de=電気」,「充電中にお茶でも」の3つの意味を含んでいる。
注2) OCPP(Open Charge Point Protocol):電気自動車用急速充電器を管理する国際標準通信プロトコルの名称である。
注3) ユニバーサルデザイン:すべての人にとって使いやすく,できるだけ多くの人が利用可能であるデザイン。一般的には年齢や性別,障がいの有無や言語の違いにかかわらず,はじめから幅広い利用者を対象に製品や機器,サービス,環境をデザインすることを指す。
注4) FeliCa:ソニー株式会社が開発した非接触ICカードの技術方式である。「FeliCa」は,ソニーグループ株式会社またはその関連会社の登録商標または商標である。
山本 脩斗
GXソリューション事業本部
システムソリューション開発部 開発グループ 所属
鈴木 剛志
GXソリューション事業本部
システムソリューション開発部 開発グループ 所属
鈴木 健司
GXソリューション事業本部
システムソリューション開発部 開発グループ 所属