東光高岳技報 No.12 2025
電気自動車の普及を後押しする
1はじめに
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しており,その一環として電気自動車(以下,EV)の普及と充電インフラの拡充を推進している。これに関連して,経済産業省の「充電インフラ整備促進に向けた指針」(1)では「国内で整備される公共の充電器については,管理・運用に関する機能や課金に適した認証機能をもつ,オープンプロトコルである通信規格を標準的に持つことが望ましい」とある。これに応えて,東光高岳ではこれまで,オープンプロトコルであるOCPP1.6(Open Charge Point Protocol)に対応したEV用急速充電器(以下,EV用充電器)および,充電ステーション管理システム(Charging Station Management System:以下,CSMS)をリリースしてきた。今回,より高度な機能を有するOCPP2.0.1への対応を開始したので紹介する。
2OCPPとは
OCPPとは,EV用充電器とCSMS間の通信を標準化するためのプロトコルである。現在OCPP1.6が主流であり,OCPP2.0.1にシフトが進んでいる。
OCPP2.0.1は,OCPP1.6に比べて,セキュリティの向上や,電力需要の状況に応じた最適な充電制御を実現するスマート充電機能,さらにISO/IEC 15118規格によるEVに充電プラグを接続するだけで,充電と決済をおこなえるプラグ&チャージなどの機能に対応しており,EV充電インフラの安全性や効率性,そしてEVユーザの利便性が向上している。
3OCPP2.0.1への取り組み
今回,東光高岳のEV用充電器ブランド「SERAシリーズ」より,「SERA-120」,「SERA-150」の2機種をOCPP2.0.1に対応させた。OCPP2.0.1対応のEV用充電器のラインアップを図1に示す。今後リリースする「SERAシリーズ」においてもOCPP2.0.1に対応する予定であり,同規格のバージョンアップに伴う追従も予定している。
また,CSMSのOCPP2.0.1への対応により,EV用充電器とCSMS間において,OCPP2.0.1での通信が可能となった。OCPPの各機能の対応状況について表1に示す。
(SERAのロゴは東光高岳の登録商標)
| 機能 | 概要 | 対応状況 |
|---|---|---|
| セキュリティ | セキュリティ要件 | 〇 |
| プロビジョニング | 充電設備の構成管理 | 〇 |
| 認証 | ユーザ認証 | 〇 |
| ローカル認証 | 充電設備で保持するユーザ認証情報管理 | ─ |
| トランザクション | 充電セッション管理 | 〇 |
| 遠隔操作 | 遠隔からの充電制御など | 〇 |
| 可用性制御 | 充電設備の運用管理 | 〇 |
| 予約 | 充電設備の利用予約 | ─ |
| 料金表示 | ユーザ認証への料金情報の定時 | ─ |
| 計測 | 電力量などの各種計測データ通知 | 〇 |
| スマート充電 | 時間帯ごとの出力制御など | ─ |
| ファームウェア管理 | 充電設備を構成するファームウェア管理 | 〇 |
| ISO 15118認証管理 | ISO/IEC 15118のサポート | ─ |
| 診断 | 充電設備の監視やログの取得など | 〇 |
| ディスプレイメッセージ | 充電設備ディスプレイへのメッセージ表示 | ─ |
| データ転送 | ベンダー固有の拡張機能 | ─ |
4おわりに
今回,EV用充電器とCSMSがOCPP2.0.1に対応したことにより,同規格に準拠したサービスの提供体制を整備した。今後は,OCPP2.0.1の特徴的な機能であるスマート充電機能の強化をはじめとした各種機能の実装を推進し,EV充電インフラに付加価値を付与していく所存である。東光高岳は,充電器メーカのトップランナーとして,カーボンニュートラル社会の実現に向けて,技術開発を通じてEVと充電インフラの普及に尽力していく。
■参考文献
(1)経済産業省:充電インフラ整備促進に向けた指針(2023)
GX ソリューション事業本部