東光高岳技報 No.12 2025

配電ネットワーク実証試験場への
大容量リチウムイオン蓄電池の設備導入

1はじめに

日本政府は,「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みの一つとして,蓄電池の活用を掲げている。蓄電池の活用は,太陽光発電(以下,PV)や風力発電など天候に左右される再生可能エネルギーの有効活用・安定供給のために必要不可欠である。そのほか,蓄電池には使用電力のピークカット注1)による電気料金の削減効果や,需給調整市場注2)での電力取引といったビジネスモデルに活用できるなどのメリットがある。また,災害等で停電した際に電源を供給するといった役割もある。

東光高岳では,前述した導入効果を期待するだけでなく,カーボンニュートラル実現に寄与する研究への活用も目的として,2024年度に小山事業所の配電ネットワーク実証試験場に大容量リチウムイオン蓄電池設備(以下,本設備)を導入した。

2設備仕様

今回導入した本設備の仕様を表1に示す。また,設備の外観を図1,設備内部の蓄電池ユニットを図2に示す。

表1 蓄電池設備仕様
蓄電池容量 1,161kWh
相数 三相3線
定格出力容量 ±500kW
定格出力電圧 AC 330V
図1 大容量リチウムイオン蓄電池設備外観
図2 大容量リチウムイオン蓄電池設備 蓄電池ユニット

3今後の取り組み

今後,本設備の導入により,再生可能エネルギーの有効活用や非常用電源としての活用をしていくだけでなく,以下のようなユースケースに向けて研究開発を進める。こうした活動を通じて,脱炭素や電力利用の高度化に向けた取り組みを推進していく。

・蓄電池やPVなどの分散型エネルギー資源を含め,蓄電池の充放電電力やPVの発電電力などを見える化し,省エネの効果やCO2排出量を管理

・EMS(エネルギーマネジメントシステム)へ本設備を組み込み,電力カラーリング注3)技術の実用化やDR注4),自己託送注5)などを検証

■語句説明

注1) ピークカット:特定の時間帯における電力消費の最大値(ピーク)を抑えること。電力需給の安定性を高め,電力コストを削減できる。

注2) 需給調整市場:送配電事業者が電力の需要と供給のバランスを取る際に必要な「調整力」を調達するための市場。調整力とは,出力の調整ができる発電設備や蓄電池の利用,需要家による節電などによって調整可能な電力リソースのことを指す。

注3) 電力カラーリング:電力を発電方法ごとにデータ上で区別すること。再生可能エネルギー由来の電力(グリーン電力)とそれ以外の電力を区別することで,環境への影響評価を正確に行うことが可能。

注4) DR:Demand Responseの略。電力需要の調整のこと。電力需要がピークを迎える時間帯に消費者や企業が電力使用を減らすことで,電力供給の安定性を支える仕組み。

注5) 自己託送:発電設備を持つ個人や企業が自ら発電した電力を,送電網を利用して別の場所にある自分の設備へ送ること。

GX ソリューション事業本部

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