東光高岳技報 No.12 2025
計器センター事業の開始
1計器センター立上げの背景
電力計測用スマートメーター(以下,SM)の本格導入が2014年度から始まり,電力量の遠隔自動検針が可能となった。その後,電力量検針の自動化に留まらず,データを活用した電力ネットワークの運用の高度化,電力分野以外への電力データの利用拡大,需要側電源リソースの拡大に伴う取引ニーズの多様化への対応など,SMの新たなニーズが生じている。
そのような背景を受け,2020年9月に次世代SMの開発と普及を使命として「次世代スマートメーター制度検討会」が発足された。この検討会では,2025年度に次世代SMを本格導入させることを目標に,一般送配電事業者10社が共通して使えるようにSMの仕様統一を図った。
この仕様統一化をきっかけとして,東光高岳では従来電力量計メーカーが行っていたSMの組立,動作試験から電力会社への納品までを一貫して担うことができる計器センターを立ち上げたので,本稿にて紹介する。
2計器センターの役割
計器センターは,次世代SMのサプライチェーンのうち,計器メーカーから入荷されるユニット注1)を完成品にまで組み立て,保管,出荷する一連の業務を担う(図1)。当社の蓮田事業所に建設した組立工場は,月産33万台の組み立て能力を保有し,自動倉庫,自動デパレタイズ注2)および自動組立ラインなどの導入により省人化・効率化・高品質化を実現している。また,計器センターの省エネ実現のため,当社の照明・空調の省エネ制御システムを導入した。計器センター事業の主な業務内容は以下となる。
① ユニットの受け入れ・保管
② 通信部へ暗号鍵の書込み
③ 次世代SMの組み立て
④ 通信部と計量部のペアリング
⑤ 完成品の在庫管理・発送
3計器事業の展望
日本が掲げる2050年カーボンニュートラル実現のために再エネ導入が加速することで,需要と供給のバランスを維持する技術的難易度が高まり,太陽光発電や蓄電池など分散化電源の細やかな制御が必要になる。次世代SMは,新たにIoTルート注3)を採用することで,中継器として分散化電源などの機器やデータをつなぐ重要な位置づけとなる。こうした流れの中,当社は以下の取り組みにより次世代SM関連事業の持続的な成長を目指す。
(1)次世代SMサプライチェーン全体の最適化
当社は次世代SMのサプライチェーン全体を担い,複雑化する電力インフラにおける高品質な計量の実現・維持に貢献する。
(2)新領域,新サービスの創出
次世代SM関連事業の発展に向けてAMIシステム注4)の開発・保守,見守り支援や電気・ガス・水道の共同検針などの新サービスの提供を通してお客様に貢献していく。
(3)技術革新への投資と人材育成
上記を実現するため,新たな事業機会に対応するための技術開発および人材育成に積極的に投資し,技術力の向上を目指す。
■参考文献
(1)東光高岳:「東光高岳グループ2027中期経営計画」p.22,https://ssl4.eir-parts.net/doc/6617/ir_material1/158449/00.pdf(2025年6月16日閲覧)
■語句説明
注1) ユニット:次世代SMの構造は計量部,通信部,ベース,ケースといったユニットで構成され,異なるメーカーや提供元の製品を組み合わせて組み立てることができる。
注2) 自動デパレタイズ:パレットに積載したコンテナをロボットで荷降しする作業のこと。
注3) IoTルート:SMから特例計量器/共同検針計量器(ガス・水道メーター)等へのアクセスルートであり,双方向通信が可能である。
注4) AMI システム:AMI はAdvanced Metering Infrastructureの略で,次世代SM を含め,通信機能や端末機器等の管理機能を持つシステムのこと。
計量事業本部