研究開発
Engineer Interview
技術者インタビュー

電力用モールド機器向け
植物由来エポキシ樹脂の開発

2017.04.03
  • 大竹 美佳

低炭素社会の実現に向け、CO2排出量・石油資源の使用量の節減につながる技術開発が、様々な分野において積極的に進められています。電力分野においても、多くの電力機器に絶縁媒体として用いられているSF6ガスに温室効果があるため、その使用量を節減することが責務となっています。

東光高岳では、電力用モールド機器の絶縁材料であるエポキシ樹脂の高性能化に取り組んできました。近年では、電力用モールド機器の更なるグリーン化を実現するために、材料そのものが環境負荷低減に貢献する樹脂開発を推進しています。今回はそのような研究のなかから、「電力用モールド機器向け植物由来エポキシ樹脂開発」への取り組みをご紹介します。

Profile

  • 大竹 美佳
    技術開発本部 技術研究所 材料技術グループ

環境負荷低減に向けて、樹脂開発という上流からアプローチ。

私たちの研究の大きな目的は、環境に優しい電力用モールド機器向けエポキシ樹脂の開発です。一言に環境負荷低減といっても様々なアプローチがあります。2006年に入社してから、製品成形時のCO2排出抑制を目的とした樹脂や、製品のライフサイクルを考えて廃棄物を有効活用した樹脂など、様々な樹脂の研究開発に携わってきました。今回の研究では、ライフサイクルでCO2を発生させない「バイオマス資源」を活用したエポキシ樹脂の開発に取り組みました。

私たちの開発するエポキシ樹脂は、電力用モールド機器向けの固体絶縁材料として使用されています。電力分野で使われる製品は、安定的な電力供給のために絶縁性能や安全性を長期にわたって確保する必要があります。そのため、お客さま観点では長期的に安全に使うことができて、なおかつコストも抑えることが必要。また一方で製造現場の観点では、製品成形時の使い勝手の良さが必要です。だから、絶縁性能だけでなく機械強度、耐サーマルショック性、成形プロセス性などの様々な指標で評価・検証を行ってきました。

電力機器用エポキシ樹脂は、主に3つの材料で構成されています。主剤、硬化剤と呼ばれる樹脂と、温度変化による材料の膨張収縮を抑えるためのフィラーと呼ばれる石英などの素材がこれにあたります。この3種類の素材を選定し、最適な材料配合や成形プロセス条件を検討していくというのが研究の流れです。素材は市販されていないものも多いので、様々な文献や電力分野以外の研究も参考にしながら選定して入手することが必要です。正直、いつも手探り状態からのスタートです。

今回のエポキシ樹脂では、主剤として亜麻仁油、硬化剤として半導体封止分野で使用されることの多いノボラック型フェノール樹脂、フィラーには球状溶解石英を適用しました。その結果、従来の植物油由来エポキシ樹脂と同等の性能を維持しながら、課題だった硬化時間を50%程度に短縮することができました。これによって、成形プロセス性と耐サーマルショック性という相反する性能の両立が達成されて、植物油由来エポキシ樹脂の電力用モールド機器への適用可能性をより高めることができました。

ハードルを越えるたびに、クリーンなエネルギー社会に近づける。

今回の研究結果をもとに、いま現在は実機段階での課題・解決策の検証を行っています。実用化に向けて、まだハードルは多いですね。10年以上こういった樹脂の研究開発に携わっていますが、本当に奥が深いと思います。新しい研究成果が得られると、次の改善点が見えてくるんです。試行錯誤を繰り返した分だけ、開発した樹脂が製品化して世の中に出ていくというのは、自分の子どもが成長して巣立っていく感覚に近いかもしれません。やっぱり、長く接しているから愛着があります。

高品質な製品を生みだすために、樹脂開発という上流から研究に取り組んでいるのは弊社の強みです。これからも材料開発の領域から、環境に優しく安全なものづくりの実現と、その先にある次世代のクリーンエネルギー社会を目指していきたいです。

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