研究開発
技術者インタビュー

太陽光発電向けスマートインバータの遠方監視制御に対応したDERMSの開発

  • 宮本 卓也

住宅や商業ビルなど、電力が使用される場所の近くに太陽光パネル等を設置して発電し、供給する小規模発電源のことをDER(分散型エネルギー源)といいます。 東光高岳ではDERに電力の安定供給のための電圧制御や周波数制御等を行う支援機能を持つスマートインバータを装備した太陽光発電用スマートパワーコンディショナを開発しています。また、これを遠隔地から集約して監視できるDERMS(Distribution Energy Resource Management System)の開発にも取り組んでいます。

太陽光パネルは昼間の晴天時には必要以上の大きな電力を発電しますが、空が曇っていたり、夜間になった場合には、ほとんど発電能力がなくなります。必要以上の電力発電する場合は抑制をしないといけませんし、過剰ならその分を蓄電して雨や曇天、夜間の電力使用に向けて備えるなどの工夫が必要です。

DERMSは各地域の太陽光発電施設を集約して管理し、どこかで過剰な発電が行われていれば不足している場所に回したり、蓄電したりといった、電力の効率的な利用を可能とします。また、遠隔地から集約して管理できるので、運用の省力化にもつながります。

Technology

太陽光発電を主とする再生可能エネルギーの導入拡大を背景に、アメリカではDERへのスマートインバータとDERMSの導入が進んでいます。
これを受けて日本でも国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で、日本での導入に向けた仕様の標準化と実証実験を行っています。

東光高岳はNEDOでの実証事業や、小山事業所に設置された自社の太陽光発電設備用のスマートパワーコンディショナ(スマートPCS)にもスマートインバータ機能を実装することを通してIEC61850に準拠した通信仕様のDERMSの開発に取り組んできました。

再生可能エネルギーの導入拡大と電力の安定供給を両立するために、いま期待されている取り組みです。

Profile

  • 宮本 卓也
    宮本 卓也
    GXソリューション事業本部
    フューチャーグリッド推進室
    フューチャーグリッド推進グループ
    主任

太陽光発電システムを効率的に運用する
制御システムの開発

宮本2010年あたりから太陽光パネルの設置台数が急速に増えました。しかし、太陽光パネルは太陽光があれば発電しますが、日が陰ったらほとんど発電しなくなります。実に変動が激しい特性があり、電力需要と発電のバランスをとることが非常に難しくなっています。

当初、太陽光パネルは特に制御を行わずに運用されていましたが、晴天時に過剰な出力が出ると設備に損傷を与えるなどの不具合を発生させてしまっていました。 そのため過剰に発電されることが予想される場合には、事前に電気主任技術者が発電設備まで出向いて出力を抑制する、または発電自体を停止するなどの処置を行う必要がありました。
しかし、これには専門の技術者が必要なので運用管理に関するコスト増が指摘されていました。せっかく発電しているものを抑制したり、止めたりするのでは非常に効率が悪いことです。

そこで太陽光パネルや蓄電池も含めて、地域、季節、系統構成などに応じて細かな制御ができる監視システムを作る必要がありました。また、それをネットワークによって遠隔地から監視することができれば、運用管理を省人化できるのでコストの削減にもつながります。

国際標準規格IEC61850に準拠した
通信仕様で遠隔地監視を実現

それぞれの役割分担について教えてください。

宮本国のプロジェクトとしてNEDOでスマートインバータの実証実験を行っています。 東光高岳も配電機器のメーカーとしてプロジェクトに参加していまして、どのように制御したら太陽光発電の安定供給を実現できるか検討しています。

その中で通信のやり方を決めようとしたときに国際標準規格であるIEC61850に準拠しようということになりました。仕様が公開されていますので機器の開発に投じるコストが安くなりますし、正当な市場競争を導くことにもつながります。
まだ社内で前例のないことだったので英文の仕様書を読み解くのにも苦労しましたが、実際の機器を用意して動かしてみながら検証し、社内のメンバーの協力もあってなんとかやり遂げました。

2030年に向けて温室効果ガスを2013年度比46%削減するという政府の目標がありますが、それに対して経済産業省がまとめたエネルギー政策の方針「エネルギー基本計画」では、再生可能エネルギーの割合を36%から38%とすることになっています。目標達成に太陽光発電は大きな役割を担うことになります。

しかし、需要に合わせて供給を行うという従来の電力供給の考え方では対応できない部分が多くあります。天候など自然の状況に応じて発電量が左右される太陽光発電のような再生可能エネルギーを広めていくためには、電力の需要バランスを意識したエネルギー利用の管理が重要になるでしょう。そこで今回のような取り組みは重要な位置づけとなるに違いありません。

安心・安全な地域のエネルギーソースを統合して管理する時代へ未来へ向けて
~いま注目の「仮想発電所(VPP)」~

宮本いま、「仮想発電所(Virtual Power Plant=VPP)」が注目されています。ある地域に設置されている太陽光パネル、蓄電池、電気自動車のバッテリーなどのエネルギーリソースを統合して管理することで、過剰な電力を必要なところへ供給したり、必要でなければ蓄電したりするといった仕組みのことをいいます。

IoTを活用した高度なエネルギーマネージメントにより地域の電力を支えていくので「仮想発電所」と呼ばれているわけですが、私たちの今回の取り組みもその一環と言えると思います。
太陽光パネルの発電能力をうまく制御してフルに使えれば、再生可能エネルギーの可能性はさらに大きく広がることでしょう。

燃料電池自動車も燃料の生産に大量の電力を使ってしまうことが課題になっていますが、余剰電力を使って燃料を生み出すなどといった解決策も検討されています。そうすれば燃料電池自動車も脱炭素社会への貢献度がさらに高いものへとなるでしょう。

終わりに~再生可能エネルギーを普及拡大させるためのビジネスモデル作り~

再生可能エネルギーの普及拡大に向けた技術は着々と進歩しています。
いま、大きな課題となっているのは、太陽光発電の制御技術でもVPPでも、いかにそれをビジネス化できるかということかもしれません。収益を生むビジネスモデルがないと普及も進みません。
今後は再生可能エネルギーを普及させるための取り組みをビジネス化していくことにも注力していくことになるでしょう。

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