研究開発
技術者インタビュー

マンションなどの大規模駐車場にも対応したEV充電管理システムWeCharge

  • 吉田 耕作
  • 藤本 千紘

カーボンニュートラル実現を目指した取り組みは活発化してきており、電気自動車(以下、EV)の普及拡大に向け、EV充電インフラの拡充が求められています。
EV充電インフラの更なる拡充のためには、EV充電の利用シーンに応じた充電器の導入が重要となってきます。EV充電の利用シーンは大きく3つに分類されます。集合住宅を含む自宅等で長時間の充電を想定した「基礎充電」、商業施設等の滞在拠点で行う「目的地充電」、高速道路のSA/PA等の移動途中で短時間の充電を行う「経路充電」があります。

利用シーンに応じた東光高岳の充電器ラインアップ

近年では、集合住宅等での基礎充電設備の普及がより重要視されており、東光高岳ではユビ電(株)(以下、ユビ電)と共同で、基礎充電設備に対応した充電管理システム「WeCharge」を開発しました。2021年のリリース後もさらなる改良を重ね、2023年10月からは 1システムで最大60台のEV充電管理を可能とし、世帯数の多いマンションなどの大規模駐車場にも対応しました。

Technology

EVユーザの視点に立ったEV充電管理システム

WeChargeは、スマホの専用アプリで充電器のQRコードを読み込み、ユーザ認証することで、誰でも簡単にEVの充電ができるサービスです。
EVの充電管理には、充電電力量の計測・記録や、充電の開始・終了の制御を行うコントローラーが必要となります。そこで、各種センサデータを計測・記録し、各種機器を制御可能な東光高岳製「エコ.Web5」をベースに、WeCharge専用のコントローラーを開発しました。
また、充電電力量の計測には「スマートメーター(SmaMe)」(東光東芝メーターシステムズ(株)製)を組み込むことで、充電時間に応じた時間課金だけでなく、充電電力量に応じた従量課金も可能としました。EV車種の違いや搭載バッテリーの状態等によって、充電時間は同じでも充電量に違いが出ることに起因した利用料金の課題にも対応することで、ユーザにとってさらに満足度の高いサービスを提供できるようになりました。

Profile

  • 吉田 耕作
    吉田 耕作
    GXソリューション事業本部
    システムソリューション製造部
    開発グループ
    課長
  • 藤本 千紘
    藤本 千紘
    戦略技術研究所
    技術開発センター
    ICT技術グループ
    副課長

従量課金にも対応することで更なる展開が期待されるWeCharge

藤本私はICT技術グループで通信関連の研究をしており、WeChargeではコントローラーであるエコ.Web5のソフトウェア開発を担当しました。充電管理を行うシステムの開発は当社が担当し、お客様と直接やりとりする部分のシステム開発は、共同開発したユビ電が担当しています。ユビ電とは、過去に兵庫県の淡路島や香川県の豊島でEV充電に関連した実証事業で関わりがあり、今回のシステム機器開発も共同で進めることとなりました。

吉田私はEV関連では、2030年までに事業活動での車両をすべてEV化するプロジェクト(EV100)に参加していた経験があります。その時の開発経験も活かし、WeChargeでは、エコ.Web5から充電情報を収集し、クラウド上で充電管理を行うサーバの開発を担当しました。
コントローラー部分は戦略技術研究所、クラウド部分はGXソリューション事業本部と、それぞれの得意分野を活かし、部門横断で開発を行っています。

藤本マンションのような集合住宅では、駐車場は共用部になることが多いので、誰がどれだけEV充電を利用したかがわかるようにし、利用者がその料金を支払う課金システムとする必要があります。EV充電の課金方法としては、充電時間に応じた「時間課金」と充電量に応じた「従量課金」があります。

不特定多数の人が使用するEV充電器は、充電時間に応じた時間課金が主流となっていますが、EV車種の違いや搭載バッテリーの状態等によって充電速度が異なることに起因した料金の不公平感が生じる場合があります。
そこで、一定の条件を満たすことで電力量メーターの検定等の要件が緩和された特定計量制度(2022年4月)を契機に、グループ会社である東光東芝メーターシステムズ(株)製のSmaMeを組み込むことで、WeChargeでも時間課金だけでなく、従量課金にも対応できるように開発しました。充電した電力量によって料金が決まる従量課金に対応することで、EV充電インフラの更なる普及拡大に貢献できます。

複数のEVを同時に充電する試験では専用シミュレーターも開発

吉田過去に携わった業務用車両のEV化を目的としたEV100プロジェクトでは、コントローラーやブレーカー等を収納している分電盤は一般利用としては大きすぎるものでした。そこでWeChargeでは、コントローラーにエコ.Web5、電力量計測にSmaMeを導入することによって、分電盤の小型化を実現しました。
また、EV充電のシステムは、24時間365日稼働し続けることが必須となります。そこで、長期間の運用についてもどう設計すべきかを模索し、検証を重ねることで長期間安定して稼働できるサービスを構築しました。

藤本コントローラーの開発においては、複数のEVの同時接続を模擬した実験も行いました。初めは上手くいかず、実際に大電流を流す難しさを実感しましたね。加えて、新たに開発したシミュレーターを駆使した通信等の評価を含め、動作確認も完了させることができました。

様々なEV利用シーンに応じた充電インフラの普及でカーボンニュートラルな未来を

藤本当社の製品は、電力機器やエネルギー計測装置など一般ユーザには見えない場所にあることが多いのですが、街中で当社の急速充電器を見つけた時には「これはお母さんの会社がつくったものだよ」と、子どもにも誇れました。世の中に役立つ製品を開発し、EV充電インフラ発展の一端を担うことにやりがいを感じています。

吉田WeChargeの開発中、社内でも他社でも、まだ誰もやっていないことに携わっていることに面白さを感じましたね。また、ビジネスパートナーであるユビ電からフィードバックやアドバイスをもらったり、良いものを作るための誠実なやり取りができたのは励みになりました。

藤本日本政府は、2035年までに乗用車の新車販売における電動車比率を100%とする目標を掲げており、WeChargeなどのEV充電設備の普及がより欠かせなくなってくると思います。また、WeChargeを導入することで、マンションの資産価値が向上するメリットも感じてもらえるのではないかと思います。

これからの時代にEV充電設備がインフラとしてさらに必要とされることから、現在もEV充電システムの開発を続けています。WeChargeは集合住宅等での基礎充電だけでなく、数時間滞在する商業施設等での目的地充電への展開も考えられます。東光高岳では、基礎充電、目的地充電、経路充電の様々な利用シーンに対応できる充電器のラインナップを揃えています。今後は基礎充電だけでなく、目的地充電(中容量急速充電器)を加えた従量課金サービスに対応できるよう、研究開発に励んでいきたいですね。

吉田WeChargeはマンションだけでなく、通勤先などの他の基礎充電設備にも導入が進んでいます。大学などでも導入されており、教員がEVで通勤しているという話も聞いています。ガソリンスタンドで給油する必要がある内燃車と比べて、EVは自分の住んでいるマンションや通勤場所で基礎充電が済むためとても便利です。将来的には、すべてのマンションの駐車場にEV充電設備が導入されるのが理想です。2050年のカーボンニュートラルの実現に向かって、これからも先進的な技術とサービスを提供していきます。

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