国内初・鉄塔型フルカラー演出照明による新たな価値の提案
- 仲山 雄貴
- 宮田 広樹

2021年7月より、青森県八戸市のプライフーズスタジアムにて、鉄塔型としては国内初となる「フルカラーによる光の演出」が可能なLED照明設備の運用が開始されました。本設備は、東光高岳を代表企業とする「東光高岳・京谷電気・キャデック特定建設工事共同企業体」が八戸市から受注し、9ヶ月間にわたる工事を経て完工したものです。
スポーツ施設用の照明による光の演出は、従来のナイター照明に留まらないその汎用性の高さが注目を集め、スタジアムやアリーナなどの設備の充実が求められる大規模施設で徐々に導入が開始されています。プライフーズスタジアムでも、八戸市の要求を満たした上でさらなる価値を提供するために、我々から光の演出を提案いたしました。
Technology
国内初・カラー演出可能な照明技術
八戸市のプライフーズスタジアムに設置された鉄塔型のLED照明設備では、208台のLED投光器と196台のカラー照明を組み合わせて光の演出を実現します。
映像や音響との連動も可能なこれまでにない取り組みとあって、竣工当時から地元メディアに数多く取り上げられました。また、2022年6月には、一般社団法人照明学会の「照明優秀技術賞」を受賞しました。受賞理由は、本設備が鉄塔型では国内で初めてカラー演出可能な照明設備として認められたことにあります。審査において、技術の普及発達に大きく貢献したこと、照明施設として企画設計が卓越していることの二点が評価されました。


Profile
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仲山 雄貴GXソリューション事業本部
PPP/PFI推進室
課長 -
宮田 広樹GXソリューション事業本部
PP/PFI推進室
主任
PPP/PFI推進室での新たな挑戦:光の演出で地域を活性化
仲山私たちの所属するPPP/PFI推進室は、自治体や国と民間企業が協業するPPP(Public Private Partnership)をメインで担当する部門になります。当社の強みである電力設備や照明設備をはじめ、他企業と協業した公共事業を行っています。
私は以前の部署では変圧器の設計を担当していましたが、業務の幅を広げてみたい気持ちがありました。プライベートで家族と過ごす中で、公共サービスの必要性を感じていた時期と重なり、PPP/PFI推進室メンバー募集のタイミングで立候補しました。
宮田私も、同時期に立候補し、同部署に所属しています。当時、PPP/PFI推進室では、最初の大規模事業として八戸市のプライフーズスタジアムの案件が始まっていました。メーカーである当社にとって挑戦的な事業に身を置いて、自分の成長につなげたいという思いと、地図に残る仕事に関わりたいと思っていたことが手を挙げたきっかけです。
仲山「照明優秀技術賞」を受賞したプライフーズスタジアムでは、お客様への提案当初から演出の要素を加えたカラー照明による付加価値について独自に提案をしていました。光と音によって演出の幅を広げることができ、サッカーで例えると入場からインターバル、ゴール、退場まで観客を楽しませることができます。また、スポーツでの照明演出に限らず、地域のイベントや様々なライトアッププロジェクトなどにも活用していただいています。
宮田私は配属されてすぐにプライフーズスタジアムの案件に携わり、自治体、地元企業、メーカー側との調整を担当しました。設備の細部(の仕様)をどのように実現するかを決める必要があったので、工期の後半は、週の半分を東京と八戸を行き来する目まぐるしい日々でしたがとても充実していました。
終盤では、選手の入場曲に合わせた照明の演出を考えたのですが、会場に選手も観客もいない中での演出確認試験時は、利用者に本当に喜んでいただけるか少し不安でした。しかし、竣工後最初のナイターに足を運んだとき、コロナ禍で声の制限があったものの、会場の反応が良くて安堵したのが忘れられない想い出となっています。

お客様のニーズを探り、フェーズごとに連携プレーで協力
仲山私は2023年5月から仙台市のスタジアムの営業を担当しました。八戸市のプライフーズスタジアムと同じく、Jリーグクラブのホームスタジアムなので、観客を楽しませるための体験的な演出を提案しています。屋根の白い帆をスクリーンに見立てて、108台のカラー照明で照らし、さまざまな演出プログラムと照明を組み合わせて、選手のプレーを盛り立てる演出を計画しました。
さらに、スタジアム入口のコンコースの梁にもカラー照明を取り入れ、最寄りの泉中央駅を利用する観客の気持ちが高まるような場外の演出提案も追加で採用していただきました。
案件の進行は、フェーズごとに分けられます。最初の営業のフェーズではお客様のニーズを探り、事業化の可能性を見極め、提案書をつくります。
宮田お客様とのご縁をいただけたら、建設のフェーズに切り替わり、実際に現場を動かしていきます。要求内容の確認、協力会社の調整、工事の進捗管理などの業務ですね。さらに、お客様に納入設備の維持管理を求められるケースでは、工事完了後の運営のフェーズでメンテナンスなどの対応をします。
仙台市のスタジアムでは、建設のフェーズを私が担当しました。仲山さんが営業で提案した内容を、どのような方法で実現していくのか、月に数回は現場を訪れてお客様と調整を重ねていきました。スタジアムをどの色で照らすか、どのような動きをつけるかなど演出プランについてもご提案しました。
仲山私は、営業のフェーズを担当することが多いです。お客様のふんわりしたイメージを固めて、具体的な提案をするのが営業の仕事。情報を総合して、お客様のニーズを満足するための具体的な設備仕様を決めていきます。
宮田私は建設や運営のフェーズの業務を多く担当しています。建設のフェーズでは、お客様や協力企業と認識の共有ができているか、どう形作るか等、話し合いを重ねて決定するので、責任の重みを感じます。
仲山提案書の内容をより具現化するために、建設のフェーズでバシッと決めてくれるのが宮田さんです。細部をしっかり詰めていってくれるので安心感があります。
宮田私は全体のイメージをつくることがあまり得意ではないので、ポイントを捉えてイメージをつくる仲山さんの営業力を見習いたいです。
仕事のアイデアにつながるよう、街歩き中や、テレビでのスポーツ観戦中にも照明設備に目を向け、最先端の取り組みに関する情報を集めています。
仲山「光」というニーズに応えて、スポーツ施設以外のLED化事業も手掛けています。例えば、山梨県韮崎市では77施設の照明設備をLED化した実績があります。
77施設の中には、市役所の庁舎、公民館、体育館、屋外のスポーツ施設、トンネル、道路、街路灯などが含まれています。種類と量が莫大だったので、場所に応じて照明器具の種類を変えるのに苦心しましたね。
宮田また、最近では社内の他部署と協力する事例も増えてきました。お客様の要望を叶えるためには、社内での柔軟な協力関係が必要です。一例ですが、お客様から停電時にEVから電源をとることができないかというご要望があり、当社の専門部署と協力してEVから施設へ電力を供給できるV2H装置を採用していただいた例もあります。

東光高岳の技術・経験を活かした提案で、人々に感動を
仲山公共事業は、工期が定められているために提案の段階から待ったなしに進行します。重要なのは、いかにお客様のニーズを満たし、他社と差別化できる提案を短期間でできるかです。お客様に納得してもらうために、最新のアイデアや技術、コンセプト、省エネ対策など、当社の得意分野の商材も含めて、さまざまな要素を組み上げていくのが特に難しい部分です。
PPP/PFI推進室の役割は、公共の設備をより良いものになるよう提案することです。そのために常日頃から設備を熟知するための勉強をしています。お客様へ提案する中で知識が役立ちますし、深い信頼によってさらにご相談をいただけるのは嬉しく、やりがいを感じます。お客様に「ありがとう」などのお言葉をいただいたり、別の案件のご縁に繋がったときには喜びもひとしおです。
宮田私は完成した設備を見たときにやりがいを感じます。試合に足を運んで、実際に観客が入っているのを見て、想定以上の歓声を聞いたときには感動が沸いてきます。施設を利用する選手から「ピッチに立ってみると、思った以上にいいね」「モチベーション上がるね」などの声を聞くと、頑張ってよかったなと思います
仲山プライフーズスタジアムの功績が社内外で評価されたことは、PPP/PFI推進室の大きな一歩となりました。更なる事業拡大を目指し、これからも新たな価値を提案し、社会に貢献し続けていきたいと考えています。

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