技術者インタビュー

経路充電インフラの課題解決に貢献する最大出力150kW EV用大容量急速充電器

  • 山本 脩斗
  • 松本 優基

電気自動車(以下、EV)の普及に欠かせない充電インフラ設備。近年はEVバッテリーの大容量化が進み、より高出力に対応した充電器のニーズが高まっています。特に高速道路などでの、移動の途中に行う充電においては、充電時間を短縮し、ユーザーにとって利便性の高い充電インフラの設備の拡充が一層求められている状況です。

東光高岳では、カーボンニュートラルの実現に向けたソリューションとして、2005年頃から急速充電器の開発に着手しました。2009年の初号機販売以降も積極的に新製品を開発し、改良を重ねてきました。2024年よりブランドネーム『SERA(セラ)』シリーズ(※1)として展開しているラインアップは、15kWから120kWまで利用シーンに合わせた4種類が揃い、これまでの全国販売台数は約6,000口(2025年3月時点)にのぼります。
そして今回新たな充電ニーズに応えるべく、経済産業省の方針に合わせ、最大出力150kWの急速充電器『SERA-150』を新たに開発しました。ここでは、開発に携わった技術者の声や、東光高岳の急速充電器開発における今後のビジョンについてご紹介します。

※1 SERAについてはこちらをご覧ください。

Technology

150kW出力で最小レベルのコンパクト設計を実現した新型急速充電器

EV充電の利用シーンは「基礎充電」「目的地充電」「経路充電」の3つに分けられます。集合住宅を含む自宅等で長時間の充電を想定した「基礎充電」、商業施設等の滞在拠点で行う「目的地充電」、そして高速道路のサービスエリア等の移動途中で短時間の充電を行う「経路充電」です。

今回開発した大容量急速充電器『SERA-150』は「経路充電」に最適なモデルとなります。『SERA』シリーズでも最大の150kW出力を実現することで充電スピードが向上しました。また、設置面積は一世代前の『SERA-120』と同等寸法で、150kW出力の急速充電器としては業界最小レベルの省スペース化を実現しています。
そのほか、経済産業省および国土交通省が策定したガイドライン(※2)に基づき、最大で200mmの基礎(台座)上に設置した場合にも急速充電器の操作高さが1,400mm以下となるように各操作部位を配置し、誰にとっても使いやすいユニバーサルデザインに配慮した設計を形にしました。さらに充電ガンを収納するコネクタホルダ部を本体に内蔵することで操作性や安全性の向上、雨雪対策効果も期待できます。加えて、課金方式は従来の時間課金方式だけでなく、特定計量制度に対応した従量課金方式も選べる形にしています。充電した電力量に合わせた課金で、ユーザー・事業者双方にとってより柔軟性のある料金制度に対応できます。

※2 「電動車のための公共用充電施設におけるユニバーサルデザイン・バリアフリー対応に関するガイドライン」(経済産業省・国土交通省/2024年8月策定)

Profile

  • 山本 脩斗
    山本 脩斗
    GXソリューション事業本部
    システムソリューション開発部
    開発グループ
  • 松本 優基
    松本 優基
    GXソリューション事業本部
    システムソリューション開発部
    開発グループ

EV充電インフラのニーズに応える大容量モデルを開発

山本現在、日本ではカーボンニュートラルの実現に向けて、経済産業省が2030年までに国内の充電インフラの口数を30万口にする目標を掲げています。実際に口数自体は増えているのですが、充電スピードに関して、現状は平均出力40kW程度とかなり低い値になっています。EVバッテリーの大容量化も踏まえると、今後の経路充電は100kW以上がマストになると思われます。急速充電器の利用者からも「出力を上げてほしい」「充電時間をもっと短縮したい」という要望があり、時代に即した充電インフラの整備を目的に、最大出力150kWの急速充電器『SERA-150』を開発することになりました。

私は同シリーズの開発に続き今回のプロジェクトに参加しました。リーダーとして開発スケジュールや目標コスト、社内外とのレビューといったプロジェクト全体の管理を実施しつつ、筐体構造の設計と電気回路の設計といったハードウェアも担当し、いわゆる三刀流でやらせていただきました。設計しながらのリーダーは今回で2回目ですが、前回の経験もあって、メンバーにどう指示を出すか、スケジュールをどう組むかなど以前よりうまくできたと思います。

松本私は今回のプロジェクトからの初参加です。担当は製品の開発評価試験で、社内外での試験の実施や製品化へ向けた品質保証部門との連携を担いました。
リーダーの山本さんは、年齢は近いのですが本当に頼れる先輩で、わからないところがあって聞くと明確に教えてくださるのですごく勉強になりました。

山本製品開発で毎回心がけているのは、設計だけでなく試作器を自分自身で組み立てることです。設計して自分で組み立ててみると、「組みにくい」「こうすればもっと良くなる」といった点が見つかります。それをメンバーにも共有し、意見をもらいながら、より良い設計になるように開発に取り組みました。

開発期間は過去最短 数々の困難を乗り越えて

山本今回の開発の中で特にこだわったのはサイズ感です。独自調べではありますが、他社の近しい容量帯の急速充電器と比べて業界最小レベルに近いコンパクト設計になっているのが特長といえます。『SERA-150』は当社の120kWモデル『SERA-120』と幅、奥行きの平面寸法が同じです。急速充電器を設置するお客様からすると、同じ設置面積の中で150kWのシングルモデル(1口)か120kWのデュアルモデル(2口:合計最大120kW)のどちらかを、充電シーンに応じて選んで設置できるようになりました。
ただその分、開発中はこのコンパクトな設計に部品をどう収めるか、部品を詰め込むことで生まれる熱問題をどうするかなど苦労した点が多かったですね。実際、開発評価での温度上昇試験では一部の測定箇所で許容温度を超過してしまいました。試験の中で「この部品の許容温度が超過しているので改善してください」というフィードバックがあったので、回路構成を変更し、筐体板金側の構造も調整しましたが、それだけでは温度が下がらず……最終的にはソフトウェア担当メンバーの協力も得て、制御パターンまで手を入れクリアできました。

松本まさにその試験に私も関わっていたのですが、外部の試験施設でしか実施できないので、社内で事前に測定したデータもない未知の状態からのスタートでした。試験1回目で許容温度を超過してしまい、試験施設が使える限られた期間で対策する必要がありました。

山本温度上昇試験は筐体内温度が飽和するまで確認する必要があり、1パターン取るのに短くても2時間、長いと3〜4時間かかります。1日で試せるのは数パターンで、1パターン試した後、温度を下げてから次を試すという繰り返しです。

松本1パターン取るのに時間がかかるので当てずっぽうで何パターンも試すわけにはいかず、NGとなった結果から効果的な対策を考え試行錯誤を重ねました。結果的に許容温度に収まる形が見つかって本当に良かったです。

山本許容温度を超過している部品がわかった時点で、実器と測定結果を照らし合わせながら対策結果が温度上昇に与えた影響を考えて、試験パターンを何度も検討していきました。実器を使って初めてわかることも多く、何十通りもトライしましたが、クリアしたときにはホッとしましたね。

松本社内で試作器を作ったタイミングで仕様変更が発生したときも大変でした。ハードウェアだけでなくソフトウェアや試験工程全体も含め、開発スケジュール全体に影響が出ました。私が担当する開発評価試験は開発工程の最終段階に近いところなので、限られたスケジュールの中で効率よく進める必要があります。ハードウェア設計者やソフトウェア設計者と協力して挽回し、目標期間内で完了できました。今回はもともと過去最短の開発期間だったため、終盤でのスケジュール変更は心臓バクバクでしたね(笑)。

山本このプロジェクトの開発期間は、15kWモデル『SERA-15』のときよりもさらに短く、今までにないタイトな進行でした。ただ、ハードウェア担当もソフトウェア担当も熟練の技術者が揃い知見が豊富だったこと、また「こういう充電器を作りたい」というゴールが明確だったこともあり、一気に突っ走っていくことができたと思います。

松本製品のリリース後、納入件数は順調に伸びています。プレスリリースや展示会、お客様へのプレゼンテーションでも良い評価をいただいており、手ごたえを感じています。

山本ハードウェア設計者である私は、納入先や展示会などに赴くことで「ここをこうしたい」といったお話をお客様から直接いただくこともあります。営業のフィルターを介さず生の声を聞き、次の開発モデルに活かしています。ご要望として意外と多いのは「企業イメージに合うようなオリジナルのラッピングにしたい」というニーズです。お客様のご希望に沿ったデザインに変更できる点は非常に好評ですが、当社のロゴが見えづらくなるのがちょっと残念ですね(笑)。

次世代超急速充電器の開発で更なる充電インフラの拡充へ

松本私自身、このプロジェクトに加わるまでは急速充電器のこと、開発評価試験のプロセスなど何もわからない状態からのスタートで、最初は不安も大きかったです。しかし先輩方もお忙しいため、自分も主体的に動かないといけないと思ってやってきました。初めての試験でうまくいかずやり直したり、試験スケジュールが押されたりと困難に直面したものの、先輩方の力も借りて無事に期間内で試験を終え、CHAdeMO(※3)の認証を取得できたときには大きな達成感がありました。

山本機能のバージョンアップや他モデルにはない追加機能があると、従来同様の試験だけでなく新しい試験を検討する必要もあります。その点で松本さんにも、情報収集や試験回路構成の検討、必要日数の見積もりをしてもらい、外部の試験施設でのスケジューリングも含めてやってもらっていました。かなり酷なオーダーもしたと思うのですが、知識のインプットだけでなく、見て、触って、体感して、自分で理解して覚えていく姿勢が非常に良かったと思います。

松本EV普及が進む中で、市場ニーズを正しく捉え、それに応えられる製品をいち早く開発し、日本の充電インフラの拡充に貢献したいと考えています。実は『SERA-150』の開発に並行して、『SERA-400』も開発・リリースすることができました。『SERA-400』は、CHAdeMO規格では世界初(※4)となる、最大出力400kWの超大容量急速充電器です。私はこのプロジェクトでも開発評価試験を担当させていただき、さらに多くの経験を積むことができました。今後は、試験のスペシャリストとして、そして将来的には開発にも携わるリーダーとして、両面から充電インフラの発展に貢献できる人材を目指したいです。

山本急速充電器は、充電口数が増えてくると、それらをコントロールするための仕組み作りも重要になってきます。今後は急速充電器そのものの開発だけでなく、当社が提供するSERAシリーズ全てに対応する充電管理システムの開発についても挑戦していきたいですね。

※3 CHAdeMO:2010年に日本が主導して規格化を実現したEVの急速充電方式であり、2014年にはIEC(国際電気標準会議)にて国際標準として承認された。「CHArge de MOve=動く、進むためのチャージ」「de=電気」「充電中にお茶でも」の3つの意味を含んでいる。

※4 2025年3月31日 「世界初!最大出力350kW/口、最大電圧1,000V次世代超急速充電器がCHAdeMO 2.0.2認証を取得」
https://www.tktk.co.jp/news/entry/000509.html

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